ディティールアップ工作が何なのか?なぜ必要になるのか?
なんとなく判って頂けたかと思います。
となると
次に気になるのが・・・
「艦船模型のどこをどうディティールアップすべきなんだろう?」
という事です。
ディティールアップするポイントを見つけ出すための情報源として
- 模型専門誌の作例
- 艦船研究書
- 艦船の写真集
上記の3つに大別されてきます。
模型専門誌の作例を参考にする
専門誌で有名モデラー、実力派モデラーさん達が製作した艦船模型の製作記事を参考にするのが
一番迷わずに済むと思います。
後述の艦船の専門誌や研究書籍とは異なり、
艦船模型専門誌は、
実艦の特長も踏まえつつ、模型にどう反映するか?がテーマなので・・・・
- 実艦についてのリサーチ
- 製作方法やポイントのリサーチ
- 使用パーツや模型テクニックのリサーチ
艦船模型のディティールアップに必要な全ての情報が集約されているのが
模型専門誌の最大の魅力です。
艦船模型のディティールアップに初めて挑戦される人に特にオススメしたいのが
- 総ざらいシリーズ
- 艦船模型スペシャル
の2誌です。
後日、他誌と併せて詳しく紹介する予定ですが、本記事では
鉄板とも言える2誌を簡単に紹介しておこうと思います。
帝国海軍 総ざらい シリーズ
まずはモデルアート社から発売されている
「帝国海軍〇〇総ざらいシリーズ」です。
発売から日時が経過していますが、まだまだ新しいシリーズ本。
〇〇には艦種名称が入るので、駆逐艦総ざらい、戦艦総ざらいという形で
必要な情報が「総ざらい」でまとめてあります。
最大の特徴は、「総ざらい」というだけあって
- 各艦の形状の変化(図解・写真)
- オススメディティールアップパーツの紹介
- 製作記事
と、ディティールアップ、模型製作にあたって必要な情報が一通り揃っている事です。
ディティールアップ工作の疑問や不安が、大幅に解消されており
「ディティールアップ工作を本格的にスタートしたい人の最初の1冊」
には、非常に適しています。
ア〇ゾンはもちろん、書店の店頭ですら時々見掛けるので、入手も容易なはずです。
ただ、後述する写真集や研究書籍に比べると
内容が判りやすい反面、各艦船の変遷は、主砲や対空機銃など目立つ部分に留まり、船体の形状変更、舷窓の増減については解説が及んでいない傾向があります。
あなたが本格的に艦船模型にハマった頃には少々物足りなさを感じるかも知れませんが
持っていて損の無い1冊になるはずです。
艦船模型スペシャル
もう1誌、紹介しておきたいのが、艦船模型スペシャルです。
全般的に高レベルな作品が豊富な画像とともに載っています。
各記事には、製作を担当されたモデラーさんが実艦の画像や資料を参照した上で、
キットから形状を変更したり、使用するパーツを取捨選択した経緯が説明されているので、その内容がそのままディティールアップのポイントになってくるので、大変参考になります。
あとは、その記事の内容を参考にしつつ、自分の技術の許す限りで取り入れていけば良い訳です。
特に艦船模型スペシャルでは、各号で特集した艦については
図面や写真を用いた解説で
- 兵装の搭載位置
- 艦橋や煙突、船体形状の変遷
も詳しく追っていますから、ディティールアップの参考には打ってつけです。
このように
専門誌の作例解説を参考にするのは
自分でリサーチの手間を大幅に減らす事が出来て、手軽な面もありますが・・・
・あなたの製作したい艦船の作例が載っているとは限らない
・自分なりの考察や分析が入る余地が少なくなる
・有名モデラーさんとあなたとでは同じ写真でも、見え方や印象が異なる事も。
という点では、難点があります。
艦船専門誌・研究書・写真集でリサーチする
ディティールアップ工作に慣れてくると
「もっと実艦に近づけたい」
「ココはどうなっているんだろう?キットの通りの形状でいいのか?」
「モデラーさんは、こんな風に作ってるけど、自分のイメージとはなんか違うかも・・・」
と思う機会が増えてくるかも知れません。
この段階まで来たら、ぜひ手に取って欲しいのが
- 艦船の写真集
- 艦船の研究書
上記の2つです。
艦船の写真集でリサーチする
日本海軍に限らず、かつての戦艦や空母、艦船の多くは失われており
実物を直接見る事は叶いません。
中には記念艦として博物館となっているものもありますが
塗装が塗り替えられていたり、当時と形状や兵装が異なっている箇所もあったりします。
それでも肉眼で直接見れるだけ恵まれて居るほうで
殆どは、海底の奥底か、すでに解体されて「存在」すらしていない状態。
ですから、艦船の当時の写真は、自身の眼で直接見る事が出来る唯一の手段です。
私も経験があるのですが、実艦の写真を見るようになって
艦船模型のキット(特に1/700スケール)では、形状の相違や省略が多い事を知りました。
端的に言えば・・・
「キットよりも、実艦の方がずっとカッコよく見えるなぁ」
という訳です。
そして、実艦の写真と同じ形状になるように、艦船模型をディティールアップできれば
実艦の写真を見て感じた「カッコいい」「感動」が、そのままあなたの作品にプラスされていく事になるので
作ったあなたも、見る人も「満足感」がより高まる訳です。
そういった意味で、艦船の写真集はあなたの作品のレベルを引き上げる可能性を秘めているのですが
写真集という性質からなのか・・・
- 掲載写真に対する解説が控え目
という傾向があります。
ですから、艦船に対する基礎知識が少なかったり、リサーチに慣れていないと
写真を見ただけで終わってしまう可能性も高いので、この点は注意が必要です。
実艦の写真をつぶさに観察しリサーチするのは、時間も掛かるし骨の折れる作業です。
しかし、その分だけ得られるものも大きいことは、ぜひぜひ覚えておいて欲しいと思います。
(わたくし流ではありますが、実艦の写真について、詳しいリサーチ方法のポイントは後日解説の予定です。)
艦船のCG集、図面集でリサーチする
艦船の実在艦の写真だけでなく、
図面やイラスト、CG集もリサーチに大いに参考になります。
作図者のリサーチや主観が入り込む余地があり、情報の正確性という面では写真に一歩譲るかもしれませんが
専門家がリサーチした結果を、立体的な図解やイラストで視認できるのが最大のメリットです。
特に写真では黒ずんで見える事の多い入り組んだ部分を、専門知識を踏まえて立体図に書き起こされているので形状が把握し易く、疑問もスッキリ解消するはずです。
私の手持ちの資料としては、上画像の
- スーパーイラストレーション シリーズ
- 軍艦雑記帳(上・下巻)
はお世話になっています。
特に軍艦雑記帳は、日本海軍の軍艦で装備・使用された装備品がイラストと活用法を併せて解説してあるので
艦船模型の製作にも、非常に参考になります。
タミヤ模型から出版されており、模型店で入手できるのもウレシイですね。
艦船の研究書でリサーチする
艦船の研究書は、「軍艦の実像」を追及することがテーマです。
- 軍(敵・味方)の戦闘記録、報告書
- 乗組員の証言
- 写真
- 戦術・戦略
- 国際情勢
などなど・・・。
写真や図解もありますが、文章量が多く
模型製作のためのリサーチをしているのか、研究文章を読んでいるのか麻痺しそうな時もあるかも?
非常に専門的なのですが、その分だけ
- 船体形状の変遷
- 兵装の位置・変更
など、最新の考証に基づいた情報が記載されるので、謎に包まれた軍艦の兵装や船体形状に迫ったディティールアップ工作の重要なヒントになるはずです。
特にオススメしたいのが、「歴史群像 太平洋戦争シリーズ」です。
写真や図解、CGに加え、
戦闘詳報を元にした各艦の行動年表からは、各艦の
- 塗装色
- 部隊編成(活動拠点)
を考える上で、重要な資料となります。
軍艦の塗装色を決定したり、ジオラマ製作をする際の海面の色や寮艦の特定に役立ちます。
艦船の研究本は、1冊を読むとなると相当な時間を食われますし、
1冊を買っただけでは、製作したい軍艦のディティールアップのポイントが掴み切れないことも少なくありません。
しかしながら、
「誰に見せても恥ずかしくないほどの艦船模型を作りたい」
と考えるなら、一見の価値があることは覚えておくべきです。
あくまで模型製作のためのリサーチ
ディティールアップポイントを調べる方法と書籍の種類毎の活用法について
簡単に紹介しましたが、大事なのは
「あくまで、模型製作のために実艦をリサーチしているのだ」
という事です。
昔の写真や記録資料を相手にするので
不鮮明な箇所や汚損・消失により、ハッキリしない箇所は出てきます。
そこをさらに突き詰めようとして
「ココがハッキリ判るまでは、製作に取り掛かれないな」
となってしまうと
いつまで経っても模型製作に入れない事になりかねません。
中には、モデラーからいつの間にか
軍艦研究者になっている人もいらっしゃるようです。
(ご本人が楽しんでいらっしゃるなら良いですが)
これなら、リサーチなんてしない方が良いかもしれません^^;
そうならない為にも
自分の判る範囲でリサーチを尽くしたら、折り合いをつけて
模型製作に取り掛かる
という「割り切り」が必要になる事も忘れないで下さい。