艦船模型の塗装を本格的にするようになると
気になってくるのが・・・
「こんな入り組んだ場所、どうやって塗装すればイイんだ!?」
「船体を塗装していく順番が判らん・・・」
「どういう順番で塗装すれば、キレイに塗分けができるんだろう?」
という疑問です。
例えば戦艦の甲板であれば・・・
ただ木板が張ってあるだけでなく
- 通風塔
- リール
- 出入り用ハッチ
など、甲板上には備品が点在しており
それらは船体と同じ灰色で塗装されていました。
当然、
異なる色で塗分けたい所ですが
甲板上の備品は非常に小さく数も多いため
「どうやって塗装しているんだろう? 」
疑問に思う人も少なくないようです。
他にも
船底色となる沈んだ赤色を海面から一定の高さで塗り分けるのも、
手順を誤ると一気に難しくなります。
今回は、艦船模型をキレイに仕上げるための
塗装の順番や塗分けのコツについて説明します。
塗装作業の効率アップのために
艦船模型はどうしても入り組んだ部分が多いため
全てのパーツを接着してから塗装しようとすると
非常に難しい塗装作業を強いられてしまいます。
「手が震えて、筆がブレて一直線に塗り分けれない」
という以前に
「筆やエアブラシが届かない」
という状態になってしまう訳です^^;
ですから
船体に艦橋や煙突、砲塔を組み付けていく
艦船模型では
船体と甲板の塗装が終わってから
塗装を終えた艦橋や煙突を接着していく
塗り分けもキレイに仕上がりますし、
作業効率の面でもベストです。
つまり、組み立てが完全に終わってから塗装ではなく
パーツ同士を組み立て、ある程度のブロックになったら塗装し
塗装し終わったブロックに他のブロックやパーツを接着していく
という作業手順になってくるはずです。
たとえば、戦艦霧島の艦橋の床は各階とも
リノリウムが張ってあったのですが、
艦橋を完全に組み立ててから塗装しようとしても
筆やエアブラシが入らないので、塗装できなくなってしまいます。
しかし、上画像のように組み立てる前に
艦橋の各階、各パーツを塗装しておけば、キレイに塗り分けされた状態で艦橋が完成します。
ただし、甲板や船体の塗装が終わっていない状態で
完成した艦橋や煙突などを、すぐに船体に接着してしまうと
今度は甲板や船体を塗装する時に、艦橋などを丸ごとマスキングしなくてはならなくなります。
したがって
- 艦橋
- 煙突
- 砲塔
といった構造物を甲板に接着する前の段階で、それぞれの構造物はもちろん
甲板や船体も塗装がほぼ終わっている段階になるはずです。
こうする事で
キレイな塗分けができるだけでなく
マスキングの手間も大幅に省けます。
- どの段階で塗装をするのが効率的か?
- この部分は組み立てた後でも塗装ができるか?
という2つの視点で
説明書を参考に、塗装のタイミングをチェックしておくと良いでしょう。
船底色をビシッと塗り分けるコツ
船体の組み立て・整形が終わったら
船体の基本塗装に入るのですが・・・
ここで気になるのが
船底色の赤色を先に塗るべきか?
それとも灰色の船体色を先に塗るべきか?
という事ではないでしょうか?
結論からいうと
色自体はどちらから先に塗ってもOKですが
船底色の赤色と灰色の境界をピシッと塗り分けるのなら
船底色の赤色を先に塗装し、
船底色をマスキングした後で船体色を塗装する
上記の流れで塗装すると
キレイに塗り分けれるはずです。
なぜこの順序をオススメするかというと・・・
船底色となる赤色を塗った後で・・・
上画像の極細マスキングテープを利用すれば
喫水線から均等な幅でマスキングができるので・・・
マスキングテープをした状態で船体の基本色となる灰色を塗装した後、テープを剥がせば
船底色の赤色が一定幅で塗り分けられる訳です。
これが逆の手順だと
灰色を塗った広範囲の面積にマスキングテープを張り込む上に
船底色の赤色が一定の高さになるように注意しながら
マスキングテープを張らないと、色の境界線が歪んでしまうので難易度が高く、非常に大変です。
ですから
船底色の赤色を先に塗装し、
船底色をマスキングした後で船体色を塗装する
という手順の方が
仕上がりの面でも作業効率の面でもオススメです。
特にエアブラシ塗装であれば
一直線にピシッと塗り分けが決まるはずです。
また、マスキングテープについても
少し値段は掛かるかもしれませんが・・・
1mm幅や0.5mm幅などの
極細マスキングテープを購入し、利用した方が
手間も塗分けの精度も上がるのでオススメです。
甲板の塗装
艦船模型の塗装で一番面倒な塗装工程が
甲板の塗装です。
甲板は船体ほどではありませんが
それなりに広い面積を塗っていくので
塗装もしやすそうに感じます。
問題なのが
甲板上の構造物の数々です。
これら甲板上の構造物は
船体とおなじ金属製で、灰色で塗装されていたので
木甲板やリノリウム色と同じ色で塗るのはリアルではありません。
しかし、甲板上の構造物は非常に小さい上に数もかなり多いので
1個1個塗装するのもシンドイです。
甲板については
甲板色を先に塗装した後で
構造物の灰色を塗装する
これは筆塗りでもエアブラシ塗装でも
同じ手順の方が作業がはかどるはずです。
おおまかな手順としては
①甲板色を塗る(マスキングは不要)
②塗装した甲板をマスキング
③マスキングしたまま、灰色を塗装(画像は判り易いように一部マスキングを剥がしています)
となります。
①については、甲板色をそのまま塗装するだけです。
問題となるのが
甲板上のハッチや備品類の灰色を塗装する工程。
やり方は2つあります。
1つは
甲板色を塗装した甲板全面にマスキングを施し
エアブラシで一挙に塗装する方法。
塗料の濃度調整やエアブラシの使い方に誤りがなければ
最近の精密キットにみられる弾薬箱や通風塔に施された細密なモールドが
塗膜で埋まることなくキレイに仕上がり易いです。
ただし、エアブラシ塗装をするためには
甲板上の通風塔や弾薬箱などを避けて
甲板全面をマスキングしなくてはならないため
マスキングにかなりの時間を取られるのが欠点です。
もう1つの方法は
通風塔や弾薬箱など甲板上の備品のみ
筆塗装で仕上げる方法です。
筆塗りなら、エアブラシのように塗料が拡散しないので
マスキングする部分は、通風塔や弾薬箱などの周辺のみでOK。
あなたが筆塗りに自信があるなら
マスキングを一切せずとも塗装が出来るので
作業時間はエアブラシ(のマスキング作業)の半分以下で済みます。
また、ハミ出したりしても
甲板色をラッカー塗料で塗装し、甲板上の備品類をアクリル塗料で
筆塗りするなら、はみ出したアクリル塗料をアクリル塗料用のうすめ液で拭き取れば
塗り直しが簡単に出来ます。
- 作業時間が短い(マスキングの手間がほぼゼロ)
- やり直しや修正塗装が容易
という点では
甲板上の通風塔や弾薬箱を筆塗りするメリットは大きいです。
ただ、筆塗りをするので
エアブラシに比べ塗膜が厚ぼったくならないように
注意が必要です。
探照灯の塗装の順番
探照灯の塗装の順番については
- クリアープラ製の探照灯パーツ
- 通常プラ製の探照灯パーツ
上記のどちらの探照灯パーツを使うかで
塗装の順番が異なります。
最近では、メジャーになってきた感のある
探照灯のクリアーパーツを使う場合には
1:探照灯の背面にシルバーを塗装
2:探照灯の全面のレンズ部分をマスキングする
(マスキングゾルがオススメ)
3:灰色で全体を塗装
こうすることで
レンズ部分に奥行きのある実感の高い探照灯を再現できます。
シルバーは銀色の粒子が細かいエナメル塗料のシルバーがオススメですが
筆塗りだと色が混ざってしまうので
エアブラシ塗装しかできなくなるので要注意です。
筆塗りをする場合は
探照灯の背面をシルバーのラッカー塗料で塗装した上から
アクリルやエナメルの灰色で塗装する事になります。
なお、レンズ面は非常に小さいので
マスキングテープは使いづらいです。
レンズ面のマスキングには
マスキングゾルが使いやすくオススメです。
一方、通常プラ製の探照灯パーツ
つまり、透明でないプラ樹脂の探照灯パーツを使う場合は
全体をラッカーまたはアクリル塗料の灰色で塗装した後に
レンズ部分のみアクリルまたはエナメルのシルバーで塗装するのが簡単です。
その他の部分の塗装の順番
その他にも
艦船模型には灰色以外で塗り分けたい部分があります。
- 煙突の頂部の黒色
- マスト上半分の黒色
- 舷側灯
- 機銃の銃身
- 菊花紋章(日本海軍艦艇のみ)
この辺の塗分けについては
灰色の基本塗装を終えた後に別の色を塗り重ねる順序が
一番手っ取り早いです。
私の場合は
上記の部分は全てアクリルやエナメル塗料の
筆塗りで仕上げるようにしていますが
他の多くのモデラーさんも同様だと思います。
煙突の頂部やマストの黒色については
エアブラシ塗装する人も多いので
- 筆塗りの手軽さを取るか?
- エアブラシの仕上がりを取るか?
意見が分かれるかも知れません。
塗装の順序を工夫すると、作業はラクに、仕上がりもキレイ
以上、ザッとですが、艦船模型の塗装の順番について説明しましたが
上記の通りに絶対にやらないといけない訳ではありません。
大事なのは
作業箇所や状況に応じて、自分が塗装しやすいように
組み立てと塗装の順序を調整できることです。
組み立てに入る前に
説明書に一通り目を通し、チェックするようにしたいですね。