まるゆ艇 1/700 フジミ

まるゆ1号艇 1/700 製作レポート

まるゆはフジミ模型から1/350スケールで発売されているのですが

その初回限定版にオマケランナーとして付属していたのが、今回のレポートする

まるゆ1/700スケールキットになります。

 

実艦も非常に小さな潜水艦だったので、仕方がないのですが

1/700だと冗談みたいに小さいので、

武蔵の製作の合間に、パパッと作ってしまう予定でした。

 

しかし、リアルに見せようとすると意外に苦心するキットでした。
 

 

「まるゆ」について

まるゆ艇は、太平洋戦争中に
旧日本陸軍が建造した、輸送用潜水艦です。

正式名称は「三式潜航輸送艇」ですが
まるゆという通称の方が定着してしまっています。

 

「陸軍が潜水艦!?」

と驚いてしまうのですが、
これは当時の陸軍が敵艦隊と交戦中の太平洋上の島々への補給の困難さを痛感したからです。

 

太平洋上の島々を巡る戦いでは
海軍も島の陸上部隊へ補給物資を送り届けるために努力をしましたが
アメリカ艦隊の妨害に苦しめられていました。

速度の遅い輸送船では、敵航空機の餌食になってしまうので
苦肉の策として、航空機が攻撃できない夜間に
駆逐艦の高速力を活かした輸送を繰り返したのですが
一度に運送できる物資量に限りがありました。

加えて、航空機の攻撃できない夜間とはいえ、
物資揚陸地点付近には米軍の艦隊が待ち伏せを受ける事もしばしばでした。

ただし、敵に発見され難い潜水艦による輸送であれば
物資輸送量は不十分ながらも、成功率は比較的高かったので
当初、陸軍は海軍の潜水艦を借りる計画でした。

しかし、当時の陸軍と海軍の関係は決して良好ではなかった事もあり、最終的には

「陸軍独自に指揮・運用できる潜水艇を・・・」

という事で実現したのが、まるゆ艇です。

 

ゆ1号艇の1943年10月31日の竣工を皮切りに終戦までに38隻が完成しています。

まるゆは、戦況の悪化した中で活動したのですが
船だってロクに作らない陸軍が作った潜水艦なので、色々な逸話が残っています。

進水式のために海へ踊り出た所、沈み出した光景を見て海軍は騒然としたのに対し
陸軍は万歳三唱で喜んだり・・・(潜水艦だから進水式でも沈むものと思い込んでた模様)

沖縄へ向う大和とすれ違ったという話などなど・・・。(画像奥が戦艦大和)

調べれば調べるほど出てくる逸話に注目しがちな陸軍の潜水艇ですが
他にもフィリピンや八丈島など、戦況が悪化した島々への輸送に従事する中で
35隻が生き残った事実は、当時の乗員達の奮闘の賜物だったように思います。

 

「まるゆ」のプラモデルキットについて

今回製作するのは、フジミ社のまるゆ1/350の初回限定版に付属のまるゆ1/700です。

上画像の左のランナー1枚に1/700のパーツが全て収まっています。(他は1/350のパーツ)

 

いわゆる初回限定のオマケキットなので、おそらく店頭在庫のみになるかと思います。

見かけたら、迷わず確保する事をオススメします。

 

まず驚されるのは「小ささ」です。

駆逐艦の中でも最も小さい松型と比較すると
小ささが伝わると思います。

てか、ランナー枠すらも、松型駆逐艦より短いとかw

 

伊400型潜水艦は元々大きい(全長なら陽炎型よりも長い)ですが、
より巨大に見えます。

 

まるゆの後方(画像右側)に写る「大発(貨物用ボート)」2隻分の全長しかない・・・。

 

大和と比べると、もはやどっちが大き過ぎるのか小さ過ぎるのか、分からない状態ですね。

そうした事情からか説明書には
1/700の組み立て手順の説明が一切ありません^^;

もっとも、パーツ数も非常に少ないので
未塗装であれば、5分もあればパーツの切り出しから接着・組み立てまで出来ます。

  • 船体(左右分割)
  • 艦橋(左右分割)
  • 甲板

上記の6つのパーツをランナーから切り出し、接着したら・・・

 

この状態になるので、あとは艦橋を船体の上に接着すれば、まるゆは完成してしまいます。

パーツ構成も単純なので、
まるゆの形状が、なんとなく頭に入っていれば
説明書を見なくても、箱絵を参考にして組み立て可能です。

組み立てにも難しい作業は特にありませんし
塗装についても半日もあれば、終わってしまうので
史上最強のお手軽キットかと思います^^;

 

まるゆ1/700は、リアルに仕上がり難い!?

ただし、リアルに仕上げようとすると、意外に難敵なキットであると感じました。

というのも、そのまま組み立てただけでは、どうも物足りなさを感じるのです。

 

1/700という極小ボディで
ディティールが限定されている上に、直線の目立つ単純なデザイン。

 

当時の写真と比較しても、
まるゆ実艦のシルエットや雰囲気をよく捉えていますし
ディティールが過度に省略されている訳でもなさそうです。

しかし、キット同梱のパーツだけだと
直線的なラインの艦橋が小さな船体に申し訳程度に載せられているだけ感が出てしまい
いかにもプラキットという感が強くなります。

ディティールや装備・兵装といった情報量が少ない上に
非常に簡素な船体構成。

それでいて、非常に小さいキットなので
どうしても説得力・迫力に欠けてしまう訳です。

したがって、

リアル・実感の向上を狙うなら
ディティールの自作・追加は避けては通れないキットだと言えそうです。

 

なお、キットは1/700も1/350も
船体は船底も再現されたフルハル仕様です。

今回の作例のように、ウォーターラインモデルにする場合は
船体パーツを喫水線で切断する作業が必要になります。

 

まるゆ1/700の艦橋

まるゆ号は前述のとおり
建造所や時期により艦橋形状が異なります。

今回のまるゆ1号を建造する場合は
キットの説明書のパーツでなく、
艦橋前方が切り欠かれた形状のパーツを使用します。

キット指定のパーツは
ゆ2001号以降の艦橋になるからです。

好みで作り分けれるのは有り難い配慮ですね。

 

ただ、この艦橋を船体に取り付ける際に注意したいのが、

甲板との「合い」が悪いので。そのまま接着しようとしても

すこし浮いてしまいます。

 

上画像のように、取り付け前に

艦橋底部の干渉部分を切り欠いておくとバッチリ収まります。

カッターナイフでほんの少し切り欠くだけでOKです。

 

まるゆ1/700の船体

キットでは、1/700も1/350も
船体パーツは喫水線下の艦底も再現されたフルハル仕様です。

 

上画像のように海面を模したディスプレイに飾る「ウォーターラインモデル」にしたい場合は
今回の作例のように船体を喫水線で切断する必要があります。

作業中の写真を紛失してしまいましたが
喫水線近くをドリルで穴を開け、その穴を繋げるように切断していく方法で
船体を切断しました。

エッチングノコで直接切断する事も出来ますが
船体が流線型で刃が滑りやすかったので
ドリル穴を繋げるように切断していく方が無難だと判断したからです。

 

まるゆ1/700の船底板

船体には、切断した後を塞ぐために
船底板を接着しています。

切断した船体をプラ板の上に仮置きして
マジックで線引きし、0.5mmのプラ板を切り出しています。

接着後は、継ぎ目を伸ばしランナー等で消しています。

 

まるゆ1/700の35mm砲

まるゆは艦橋前に35mm戦車砲が載っていたようです。
陸軍の船らしい兵装ですが、別売りのグレードアップパーツはありません。

 

今回は、ピットロード社の旧グレードアップパーツのランナーより・・・

 


7.7mm機銃をベースに改造したパーツを使用します。

 

まず、機銃上面についている弾倉をニッパーでカットします。

 

上画像の左が加工前、右が加工後です。

 

上に向いた機銃の銃身は、上画像のようにパーツにピンセットを引っ掛けた状態のまま
テコの要領で水平に修正します。

 

その後、銃身が少々長いので
まるゆ実艦の写真を参考に、銃身をカットするだけです。

 

最近のグレードアップパーツの超絶ディティールには及びませんが
イメージは近いモノを調達できたのではないかと思います。

 

まるゆ1/700の潜舵ガード、アンテナフレーム

ここまでで、キット付属のパーツは全て揃ったのですが
物足りなさを感じたので

  • 潜舵ガード
  • アンテナフレーム
  • 防潜網カッター(?)

といった装備品を自作します。

これらは真鍮線と伸ばしランナーを組み合わせています。

フレーム状のパーツが組み合わさった事で情報量が増え、
より潜水艦らしい雰囲気が増したと感じます。

 

艦尾の旗竿(?)は真鍮線。そのスグ前にある三角トラス状の空中線支柱(?)は

伸ばしランナーで接着、組み立てました。

 

まるゆ1/700の塗装とステッカー貼

ゆ1号は、呉鎮守府に近い日立笠戸工場(山口県)で建造された事と
実艦の写真で、かなり明るい灰色で塗装されている事が見て取れたので・・・

 

作例では、呉工廠色で塗装しています。

まるゆの塗装色をリサーチしたものの、よく判らなかったので
建造所の管轄となる(一番近い)鎮守府と同じ塗装色と仮定しています。

したがって、考証的には間違っている可能性がありますので
その点は御了承ください。

 

甲板については、普通にデッキタンをエアブラシで塗装した上から
透過法でエナメルのオレンジを薄く塗って仕上げとしましたが、

もう少し暗い色の方が、敗色濃厚な戦況下で酷使された雰囲気が演出できたかも知れません。

なお、甲板上の構造物やハッチ類、アンテナフレーム等は
筆塗りしています。

 

まるゆ1/700の製作を終えて

 

武蔵1/350の建造の合間に「寄り道的」に作成した

まるゆですが、本格的にディティールアップすることになるとは思いもしませんでした。

 

もっとも、自作箇所と言っても
潜舵ガードやアンテナくらいですが・・・

上記のフレーム形状のパーツは
キットに良い意味で複雑さを加味し
雰囲気を向上してくれたので、自作して大正解でした。

 

まるゆに限らず、小さな艦船プラモデルキットは、ディティールの取捨選択というよりは

単純にどこまでディティールを追加していけるか?でしか勝負できない難しいキットなのかもと思いました。

 

塗装については、初の試みとして、クリアブルーのエナメル塗料を使った
フィルタリング塗装をしましたが、効果が認められたのは

ハルレッドやブラックなど
サビや雨ダレのウェザリング効果だけでした。

この点だけが、やや残念でしたが
それ以外は満足のいく完成となりました。

 

とても小さなキットですが、地味にプレミア度は高いので

見かけたら、とりあえずゲットしてみては如何でしょうか?